第7話 スローフォワード 第3部

必死の心の声が届いたか、ピンチの非番院長に思わぬ救世主が現れます。

日本人の心意気を感じさせる、ちょっとした夏のエピソード完結篇、どうぞ!

決して目があったわけではなかったですし、手を振ったわけでもなかったのですが、運転手さん、わかってらしたと思うんですよね。

普通なら扉は閉まってたはずなんです、あのタイミング。

絶対に待ってくれたんだと思うのです。

そして、チラッと最後に見た運転手さんは、ちょっと微笑んでいたように思いました。

”粋(いき)”とはまさにこの事。

 

私は両親が共働きだったので就学前までは保育園児でした。

断片的ですが、今でも保育園での出来事はいくつも思い出します。

中でも覚えているのは卒園式の一場面。

式の最後に、園児それぞれが将来なりたい職業について大きな声で発表してから退場します。

私は確か最後の方、あるいは一番最後だったでしょうか。

別に予め考えておくように言われた記憶はないので、多分当日その場での先生たちからの振りだったと思います。

私は、ほんの一瞬迷ってから「バスの運転手!」と言って足早に退場しました。

 

今でもバスに乗ると運転手さんの仕草をぼーっと眺めてしまうことがあります。

人命を乗せて走るという点では今の職業も同じですが、生まれ変わったら憧れのバスまたは大好きだった電車の運転手もいいなと思うのですよね。

 

ところで、今回の届け物は恐らく厳密には間に合っていなかったと思われますが、救世主のおかげで何とか間に合いました。

しかし、そこには運転手さんの協力だけでなく、やむなく行使した反則技の存在もありました。

ご存じラグビーでは、ボールを前方に投げる事は禁止されています。

真横までか、前に出すにしてもキックで出さなければいけない。

つまり前方にボールを進めるには不確定要素の強い蹴りで出すか、または洗練されたフットワークと横パス、肉弾戦による突撃で運んでいくしかないのです。

シンプルなそのルールにこそ、ラグビーの奥深さが感じられますよね。

今日の今日、子どもが授業で使うものです。

何が何でも届けなければなりません。

スポーツの神も、多少の反則は許してくれることでしょう。

 

それではまた、ごきげんよう。